韓国ドラマ時代劇の毒殺をオジサンが考える。あの毒、何?

アジア城温故知新
彩流
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最近ハマっている韓国時代劇ドラマ。ちょっと気になった毒殺について、薬剤師視点から書いてみました。

韓国時代劇ドラマに出てくる「毒薬」

BSやCS,民放からレンタルビデオまで、最近は様々な韓国時代劇ドラマが放送されています。

舞台になるのはおおよそ14世紀から17世紀まで。日本でいえば室町時代から江戸時代ごろまででしょうか。

権力争いや流産させる薬、食べ物との相性まで、様々登場します。あまり日本の時代劇ではここまで深堀するドラマは少ないように感じます。

例えば、「チャングムの誓い」では第一話から王様の命令により毒殺。その他にも、謀反を起こした政治家や王族も茶色い液体の入った薬液を飲ませています。

あらかじめ書いておきますが、薬剤師の言う「毒薬」と、ドラマに出てくる「毒薬」の定義が違う事は了解しています。ここでは後者の世間一般の「毒薬」を書かせていただきます。

時代背景

室町時代から江戸時代(前期)までを考えると、考えられる毒は鉱物、植物毒、動物毒、昆虫毒などがあります。

鉱物では、おなじみの「ヒ素」。ドラマ「ホジュン」でも、ヒ素が使われています。

植物毒は、中国から伝わった物、韓国独自の物などありますが、おなじみのところでは「毒キノコ」や「トリカブト」などがドラマでよく出てきます。

動物毒では「フグ」や「貝」等の海洋。陸では「毒蛇」、「カエル」等が考えられます。

昆虫毒「サソリ」や「クモ」「蛾」「蜂」等。

現在では「微生物:カビ」による毒もありますが、当時ではまだ微生物の考えができていません。

ドラマによく出る毒の特徴

さて、今回は殺すことを目的とした「毒薬」について考えてみます。

まず、毒を服用した際に出る症状。

ドラマでの共通点
1,「賜薬」(王様が貴族等を死刑にする際に用いられる)
2,服用してすぐに「口から血を吐く」咳はほとんど出ない
3,必ず死ぬ

もちろんフィクションなのは了解済みです。

毒薬の条件を考察

上に示した、毒の共通点を、毒薬の条件として考えてみます。流刑地やその移動中に薬によって殺されることが多いようです。

条件①賜薬(死刑に使われる)

王様が貴族(両人:リャンバン)や王族に死刑を言い渡す際に使われる「賜薬」。

儒教で親からもらった体に傷をつけることは親不孝。彼らの貴族として死ぬ、というプライドを守る死刑方法らしいです。日本で言うと、介錯人のいる切腹に相当。

さて、この条件ですが、「王様の命令があればすぐに実行可能」という事になります。

四季のある国で品質が安定いること(入手可能)
保存ができる。
持ち運べる。(運ぶ人間に害はない)

という事が必要条件になってきます。

毒キノコは毒の精製が不安定。さらにフグ毒同様に、いつでも必要な時に使える、という事を考えると候補から外れます。

ソクラテスの処刑に使われた「コニイン」。ドクニンジン由来の毒は、当時のアジアにはまだ自生しておらず、処刑に使う事は考えにくいです。

条件②服用してすぐに血を吐く

多くの内服薬は、服用してから吸収、分布、代謝、排泄という過程を経ます。

今回の条件は、殺すための薬なので「吸収」「分布」まででよいかと思いますが、それにしても服用してすぐに血を吐くところを考えると、口腔内か胃で吸収される必要があります。

また、薬液を飲む上、咳をしていないので「肺」ではないと考えられます。

アルコール(お酒)などと同じくらい早い作用。さらに血を吐いている所から、胃粘膜を損傷させていることが考えられます。

更に、強酸や強塩基、ひどい苦み等では飲むことができません(お酢レベルでも吹き出してしまいます)。

条件③必ず死ぬ

これは、致死量が明確に分かっていることが必要になっています。つまり、何度も使っている経験があるという事。

そして、解毒剤や解毒方法が当時では存在しない、という事です。薬物によっては、あらかじめ解毒剤を服用しておく、毒に体を慣らしておく、という対策もあった様です。

しかし、必ず死に至らしめることを考えると、そのような方法は取れない毒を使う必要があります。

条件に合う毒は?

これらの条件に合う毒を考えると、候補は「ヒ素」か「トリカブト」になります。

ヒ素は鉱物のため、保存などが安定しています。

トリカブトは生薬でも修治(加工)して使われることもあり、そのままでは猛毒として知られていたようです。

どちらか、もしくは両方を使う事で、即効性のある毒が作れたと想像できます。

ただ、人間の体はそう簡単にいかず、記述をみていると、5時間以上苦しんだ、死ぬに死ねなかったという事もあったそうです。

まとめ

韓国ドラマ、時代劇に出てくる致死毒について、考察してみました。文化的に体を傷つけない文化の貴族王族処刑方法。入手・保存が容易で即効性があり、更に致死量がわかる、という条件で考察。

実際に韓国の博物館など行けばもっとわかるのかもしれません。視点を変えて韓国ドラマを楽しむ良いきっかけになります。

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