孫子の兵法:兵は拙速を尊ぶ
スピードが大事。
ただ闇雲ではなく、計算も同時に。
豊臣秀吉の出世も「速さ」が要因
孫子の兵法:兵は拙速を聞くも、今だ巧久しきを賭ざるなり
おなじみ、孫子の兵法の一節です。
兵は拙速を聞く。意味
行軍、攻めるときなどは、何より速度が重要という事です。
これは移動や攻撃に対することだけでなく、陣の設営、補給確保、勝敗のつけ方等も同様です。
現代においてはビジネスにしても、自分自身の行動に対しても言えることです。
決定に時間がかかる、取り掛かるまで時間をかける、こういう事ではダメだとくぎを刺しています。
スピード・速さが勝因の羽柴(豊臣)秀吉
日本の戦国時代、速さが最も際立った人物と言えば「羽柴(豊臣)秀吉」。
農民から天下人にまで上り詰めた出世の速さもさることながら、仕事に対しても速さについてもいくつかの逸話があります。
ここでは、秀吉の出生街道(山崎の戦まで)にスポットを当てて考察します。
清州城の三日普請
豊臣秀吉の出世の原点ともいえる若き日の秀吉(木下藤吉郎)。
台風で被害にあった清州城の城壁、修繕に時間がかかっていました。そこで織田信長に「3日でできる!」と宣言した藤吉郎。
今まで職人たちが両側から徐々に作り上げていたものを、修繕部分の距離区間を区切り、一組数人のチーム制にします。
ところが、一日目は酒をふるまい職人たちを休ませます。次の日も。皆心配になるころに、開始します。
彼らへの給料は基本給のほかに、早く仕上げたチームに「信長様から特別賞与もあるぞ」と。職人たちの士気の高さは想像に難くありません。
早く終わらせれば褒美がもらえる。職人たち自ら昼夜を問わず、仕事に取り組みました。
約束通り、期間内に終わり信長が藤吉郎を褒める際、「私だけではなく、職人たちの力です」と言い、参加した職人全員に褒美が与えられました。
このスピード完成には、10人一組(実際は4,5人で交代制か)のチームワークの構築、信賞必罰、手柄の分け与えなど、現代社会でも必要な要素が組み込まれています。
一夜城(墨俣城:すのまたじょう)
1566年、織田信長の美濃攻略に参加した際の画期的な作戦。
川に囲まれた土地に城を作るという時、本来であれば少なくとも数カ月から年単位かかる築城。これを一晩で行います。
成功のコツは上流である程度組み立てた材料を、現場で組み立てる「プレハブ工法」。
相手にすれば、朝起きたらお城(屋敷)ができていたのでびっくり!忍びの連絡よりも早く完成させられてしまう。
敵方は戦意喪失と同時に、作戦変更を余儀なくされます。
ここでも、この一夜城は、発想の転換、時間の有効利用、人員の確保、情報統制が役に立っています。
兵糧攻めを中心とした攻城戦
三木城、鳥取城等は兵糧攻めで、秀吉得意の攻城戦。
個人の手柄を上げたい熱血武将にとって、兵糧攻めは活躍の場を失われます。しかし、味方の被害を考えれば、兵糧攻め程有効な手はありません。
敵も城にある程度の備蓄米があるはず。秀吉に限らず、どのような策があるのでしょう。
補給路を断つ
城を取り囲み、他の城や本拠地と連絡を取れなくさせます。減る一方の兵糧、精神的に厳しいです。
食扶持(くいぶち)を増やす
攻撃先の住民を目的の城に避難させます。城主は避難してきた住民に食事を与える必要があります。
そうすると、本来1年以上は持つはずの兵糧もあっと言う間に底をついてしまいます。
水浸しにさせる
土木工事が得意な秀吉が良く使った作戦です。
土手を作り、川の流れを変えて、目的とする城を水浸しにします。
備蓄米や塩は一度水に濡れると食べることができなくなってしまいます。それでも食べようとすると、腹を壊して病気がちに。
これらを組み合わせることで、本来時間のかかる持久戦の兵糧攻めも、早く開城交渉にたどり着くことができます。
現代のビジネスでも、生活・自己啓発でも補給が重要です。精神的、肉体的補給路は必ず確保しましょう。
中国大返し
秀吉の分水嶺ともなった「本能寺の変」から「山崎の戦」まで。ここは黒田官兵衛の功績とするところが大きいですが、採用・行動した豊臣秀吉もさすがです。
事の詳細は皆様知っての通り。兵糧攻めしていた中国地方の毛利と和睦し、すぐに明智光秀と決戦に及びます。
自分の領地内の移動とはいえ、装備した大人数での移動。補給や休憩、そして山崎での戦いでの体力回復、様々憶測される本能寺の変からの流れですが、少なくとも迎え撃つ明智光秀に勝利した結果は揺るぎありません。
ここでも、情報を得てからの意思決定の速さ、食事の手配、陣の設営等、学ぶところが多いです。
現代にも役立てる事
兵は拙速を聞く、その速きこと風のごとく、と言う言葉から「行軍」の移動の事ばかり考えてしまいそうですが、実際は「意思決定」と「補給」が要です。
意思決定の速さと正確性
最近の感染症対策を見てみると、国のトップは「先手先手を」と言っていますが、かなり「後手後手」に回っているように感じます。結果長期戦になり「今だ巧久しきを賭ざるなり」。
給付金決定まで、そして決定されてから振り込まれるまでどれくらい時間がかかったのでしょうか。
また、徐々に締め付けを強くしていきましたが、実際は最初に締め付けを強くして、徐々に解除していくのが感染症対策の方法。
秀吉の際も、大まかな見積もりから「勝算」して、城壁修理や一夜城のパフォーマンスを成功に導いています。
更に、部下たちに鞭を打って仕事をさせているのではなく、部下たちの力量を計算に入れ、成長余白を正確に判断を下しているのも、学ぶところが多いです。
職員職人に給与賞与振る舞い
秀吉の強さともいえる人の魅力。実際に会ったことが無い職員や職人が彼をどう思っているか。
仕事を頑張れば、今まで以上に賃金が上がる!となれば、秀吉になびくのも当然です。
秀吉も金に糸目はつけずに、兵糧攻めの際の土木工事に人出動員しています。これも、秀吉配下から直接手渡し。人材派遣や地頭を通さずに行い、ピンハネ防止に役立ったと言えるでしょう。
今の人材派遣会社が大儲けしている裏には、安い賃金で働かされている派遣労働者がいる事を考えると、彼らのやる気にもつながるような気がします。
まとめ
なにかを成功させる際「速さ」は重要です。
孫子や武田信玄でおなじみ「兵は拙速を聞く」「その速きこと風のごとく」も言われていますが、何も移動の速さだけではありません。
国やビジネスにおいても、また自己啓発、家庭内においてもですが、意思決定や部下や関係職員職人の破格待遇も早く成功させる要因です。
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