薬剤師の副業革命 ― 日本語教師として世界とつながる新しい働き方

薬局新人教育

はじめに:安定の中に、見えない息苦しさがある

「このままでいいのだろうか」
そんな思いを抱いたことはありませんか。

薬剤師という仕事は、社会的に安定しています。
国家資格を持ち、どこへ行っても需要がある。
人の命を支える誇りある仕事です。

それでも――
日々の調剤、クレーム対応、制度変更、そして報酬の低下。
真面目に働くほど、疲弊してしまう現場があるのも事実です。

私自身、そんな閉塞感の中で「もう一つの道」を探してきました。
その道とは、日本語教師という仕事です。


日本語教師は、薬剤師にこそ向いている

「え? 薬剤師が日本語を教えるの?」
最初はそう言われました。

でも考えてみてください。
薬剤師が毎日していることは、「難しいことを、わかりやすく説明する」ことです。
患者さん一人ひとりに合わせて言葉を選び、
専門用語を生活の言葉に変える。

それはまさに、日本語を教える力そのもの。

私は副業として週に数時間、日本語を教えはじめました。
最初の生徒はアメリカの大学生。
次はカナダ、ベトナム、ポーランド……。
画面越しに出会う人たちは、日本語だけでなく、日本の文化、考え方、医療制度まで興味を持ってくれました。

教えるうちに気づいたのです。
「薬剤師という仕事で磨いてきた“伝える力”が、こんな形で生きるなんて」と。


制度の中の仕事と、制度の外の仕事

薬剤師は国家資格です。
だからこそ、制度の中に守られています。
しかしその「守られている安心感」が、時に「縛られている不自由さ」に変わることもあります。

一方で、日本語教師は資格がなくても始められる世界。
誰かに日本語を教える、それだけで世界中の人と繋がれる時代です。

Zoomを開けば、地球の裏側にいる生徒と笑い合える。
国も年齢も立場も関係なく、ただ“言葉”を通して人と出会える。

制度の内と外。
両方の世界を行き来することで、私はようやく“息ができる場所”を見つけました。


新刊『薬剤師ともう一つの道』が伝えたいこと

そんな経験を一冊にまとめたのが、
拙著 『薬剤師ともう一つの道 ― 副業で見つけた日本語教師という生き方』 です。

この本では、

  • なぜ薬剤師が日本語教師に向いているのか

  • 副業としての始め方

  • 英語が苦手でも大丈夫な理由

  • 生徒との信頼関係の築き方

  • 二足のわらじを続けるためのメンタル術
    を、実体験をもとに丁寧に書きました。

また、「SOAP(主観・客観・評価・計画)」という薬剤師的思考を、
教育に応用する方法も紹介しています。
これは、生徒の成長を見える化するうえで非常に役立ちます。

薬剤師の経験を「別の世界で活かす」――
それが、この本の核心です。


二足のわらじは、矛盾ではなく調和

私にとって、薬剤師と日本語教師の両立は「対立」ではなく「調和」でした。

昼は白衣を着て、地域の人の健康を支える。
夜はパソコンの前で、生徒の夢を応援する。

二つの世界を行き来することで、自分自身が少しずつ柔らかくなっていくのを感じます。
人の体を支える仕事と、人の言葉を支える仕事。
そのどちらにも、共通して流れているのは「人を思う心」です。


これからの働き方に、「もう一つの選択肢」を

この本は、転職をすすめる本ではありません。
安定を捨てる勇気ではなく、視野を広げる勇気のための本です。

薬剤師としての自分を誇りに思いながら、
「もう一人の自分」に出会ってみる。

たとえば週に1回、1時間だけでも。
世界と繋がり、人と学び合う時間を持つことで、
仕事の意味も、人生の景色も、少しずつ変わっていきます。


おわりに:白衣のままで、旅に出よう

薬剤師という仕事は、人の体を守る素晴らしい職業です。
でも、心を守るのは「自分自身」しかいません。

もし今、あなたが少し息苦しさを感じているなら――
その感覚は、人生が新しい方向へ動き出す合図かもしれません。

白衣を脱がなくてもいい。
そのままで、もう一つの道へ歩き出してみませんか。

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