おなじみの松竹映画 「男はつらいよ~お帰り 寅さん」が、先週BS放送され、拝見しました。私自身が寅さんの甥っ子、今回の主人公満男世代(実際は少し下)。令和の時代に寅さんがどのように描かれているのか、期待を込めて観ました。
ネタバレ含むので、これから先はまだ観ていない方にはお勧めしません。
お帰り寅さん
50周年記念としての第50作目。前作「寅次郎ハイビスカスの花」は平成9年で、この時も満男の回想としてスタートしました。今回の50作目、上映当時スターウォーズと重なっていたのは記憶に新しい所です。
あらすじと感想
満男が作家となって、一人娘との生活。妻の七回忌でのやり取りが映画前半。そこで満男の両親のなれそめと寅さんの関わりがあります。まず、満男が結婚していて作家になっていることに驚き。それもまあまあ良い生活している。考えてみれば、満男もアラフィフ。
そして、団子やさんが喫茶店になっていて、お茶の間には手すりが。時代と高齢化を感じさせる演出です。
満男、色々あったな~。泉ちゃん(後藤久美子)との関わり、その他にも牧瀬里穂も出ていたな~。満男の成長が自分にも合っていて、こういう次世代(満男世代)ファンも多いのではないでしょうか。
そしてリリーの経営する喫茶店・バーに。回想シーンは本当に懐かしい。寅さんの「そうだな、所帯持つか」のシーンが無かったのには少し残念。
仕事の合間の泉ちゃんが書店でサイン会をしている満男に会うシーンは、懐かしさをほうふつとさせます。その後、満男の両親の家に泊まり鍋料理を囲んで団らん。階段から泉ちゃんを見上げるシーンはとても印象的。
次の日に、施設に入っている泉ちゃんのお父さんに会いに行きます。あれ、お父さんて寺尾さんじゃなかったっけ?その前後は「家族像」としての泉ちゃんの苦悩が現れます。
最後は空港で泉ちゃんを見送ります。6年前に思いをはせる泉ちゃん。何かあったのを思わせ、そして別れていきます。そして編集者から依頼されている新しい仕事を引き受けつつ、寅さんの「女房」という言葉の書き出し。
山田洋次監督らしく、現代社会の抱える家族・結婚をテーマにした作品。
回想シーン多数
寅さんファンなら、各映画で心を動かされたシーンが沢山出てきます。同窓会並みに昔の映像が出てきますが、使う映像が色あせていない。フィルムの保管状況、再生技術に驚かされます。お亡くなりになられた女優さんも活き活きとしていて、映画の魅力を感じます。
寅さんとの出会いや柴又での女優さんとの一コマ。昔の映画のアルバムを観ている感じです。
また、寅さんと満男のやり取り、今でも心震えるシーンも。
現代の満男とその家族
大学卒業後に靴屋さんであまりうまくいかず、泉ちゃんの結婚式をぶち壊した満男が、作家として大成功を収めている、いつの間にか満男が勝ち組になっている印象。社会的に、いつの間にか満男に抜かれた?とはいえ、やはり奥様を亡くされ、所々に寂しさ悲しさを表現しています。
本来の満男家族も相応に年を取っています。おばあちゃんになった寅さんの妹さくらが、スマホで孫に連絡するシーンは印象的。映像各所に懐かしさと年齢を感じさせる演出がされています。
脇役勢もなかなかそろっています。山田洋次監督というよりは三谷幸喜監督っぽく、カンニング竹山さんや出川さんがチラッと出てきてすぐに消えます。義父さんが小林稔侍、静かな物言いは流石です。
上記でも触れましたが、泉ちゃんのお父さんが橋爪功。個人的にお金を2万円とるシーンはあまり好きではありません。それより隣のベッドからはみ出している足が気になりました。
泉ちゃんの働いているNGO発表、銀座を通るシーンでもやはり「幸せ」や「家族」について色々考えがめぐらされています。ただ、泉ちゃんの夫や子供についてはほとんど出てきません。
歌は桑田佳祐
賛否両論あると思います。私は、これはこれで新しい時代として良いのかな、と思います。渥美清の歌はやはり本家。時代と共に変わるが心は変わらない不易流行。口上はDVDのボーナストラックにすればよいかな?と言った感じ。
現代の問題と重ね合わせ
渥美清さん最後の作品「男はつらいよ」は神戸の大震災で幕を閉じている。被災地で寅さんが現地の人を励ましているシーンは印象に残っています。今回は東日本大震災や熊本地震等が少し出て来るのかと思いましたが、発見することはできませんでした。
ただ、身元引受のいない要介護者や世界の貧困、家族の在り方などでいっぱいなので、あえて出さなくてもよかったのかな、という安堵もあります。
まとめ
観終わった後の爽快感はあまりありません。哀悼が始終付きまといます。やはり男はつらいよシリーズは48作で終わり、49,50は同じシリーズには並べない方が良いのでは?と思います。スピンオフとして満男を主人公にしてるので、別シリーズで。
CMなどですでに大事なシーンは観てしまっているため、哀しい所が新しく映し出されてしまい、全体として暗くなってしまいます。
男はつらいよ、同窓会スペシャルを観た感じです。初めて「男はつらいよ」を観る人にはお勧めできません。団塊世代から団塊ジュニア世代がターゲットではないでしょうか。
最後は寅さんの声で「ただいま」や気の利いたセリフで閉めて欲しかったかな。
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