ゲートキーパーとしての薬剤師。誰にでもできる訳ではなく、対策が必要です。
自殺対策:ゲートキーパー
薬局において、自殺の危険なサインに気づき、適切な対応を図る命の門番:ゲートキーパー。
薬局で勤務している中、薬や健康の他、様々な相談を受けます。あれ?と思う事から、声をかけて、話を引き出し、聞いて、必要な支援へ繋げます。
私自身も今まで薬局勤務の経験で、自殺やハイリスクの方々とお話する機会がありました。家族にも話せない、もしくは家族がいない、という方々が多く、たまたま薬局の薬剤師に少し話を、という展開が多かったです。
誰にも話せない、話したところで変わらないと思っている方は多いです。
自殺の統計
厚労省のホームページを参考にすると、遺書などがあり、裏付けなどから「明らかに自殺」としては令和元年で20,169人。条件に該当しない変死を含めれば一説には3万人から5万人近くになるかもしれません。
また、10代から40代までの死因の一位を自殺が占めています。
2万件の自殺のうち、半数以上が自宅で命を絶っています。
詳細は厚労省や警察のホームページに掲載されています。
薬局の役割
誰でもがアクセスできる、身近な存在としての薬局。処方箋の調剤だけでなく、健康支援を心がけています。
実際に自殺が頭をよぎる人でも、薬局で「死にたい」という願望を口に出す人は稀。こちらが気が付いて、話を聞くことで、本人も少し悩みを吐き出せて、心が軽くなることが多いです。
いつもと違う雰囲気や目の動き、話し方などから「少しお話しましょ」と、落ち着いて話すよう心掛けています。
その為にも、薬局ではプライバシーに配慮した空間・設備と従業員の余裕が無ければなりません。
話を聞くときは
「傾聴」の技術が必要になります。これは短期間で身につけられるものではないのですが、日々意識することで、上達していきます。
相談を受ける際、可能であれば、隣に座って、目の高さを同じにして話を聞くようにしましょう。相手に圧迫を与えずに聞く姿勢になります。
話を聞く際は同世代が理想。話していることが理解できるかどうかにもつながります。
また、話を聞く側も思い詰めた経験がある、自殺を考えたことがあるほうが良いです。
想像すればわかると思いますが、自信もって邁進している人に、なかなか相談しにくいです。
薬局ゲートキーパーの注意点
薬局で働いている人には、まじめな方が多いので、全て相談を受けた本人で解決しようと思ってしまいます。そして、助けにならなかったときの無力感、後悔は計り知れないストレスになります。
心理学のプロフェッショナルや日々相談をされている方々は、訓練を受けています。残念ながら薬学部や新入社員研修等ではそのような授業や練習はありません。
ゲートキーパーの講習会などに参加しても「寄り添って話を聞きましょう」とは言われますが、自分自身を守ることは明確に学びません。
聞き流す技術が必要
ゲートキーパーはあくまでも「つなぎ役」として、プロにお任せする、橋渡しをするのが大切です。
真面目な従業員ほど、薬の成分を調べたり、励まそうとします。更に「個人情報保護」という壁があり、なかなか他の施設に紹介というのも考えてしまいます。
しかしながら、命はとても大切。話や救済制度などのプロの方々にはかないません。話を聞きながら、行政や保健所、医療施設を紹介するようにしましょう。
保健所や行政、薬剤師会からのパンフレットや「いのちの電話」等のポケットティッシュなどの道具を活用しましょう。
自分の時間を大切にする
薬局勤務者も人間です。普段の仕事の上に、人生を左右するような悩みを打ち明けられると、かなり疲れます。
しっかり休みを取り、自分自身の為の時間を持ちましょう。
特に、薬局長レベルになってくると、中間管理職特有の悩みや精神労働が多くなってきます。
頭が休まらずに不眠につながり、疲労が抜けないこともあります。
その様な中で、「かかりつけ薬剤師」の24時間対応等の電話もかかってくることがると、自分の命さえ危うくなってきます。
まず、自分の携帯電話番号は相談者には教えないようにしましょう。メールも同様です。
メールやLineは受け取った瞬間から「返信どうしよう」と考えてしまいます。相手は時間にかまわず送ってくることがあるので、かなりストレスになります。
「自分を守る」のがゲートキーパーの仕事でもあることを忘れないようにしてください。
まとめ
今回は薬局勤務者に向けて、ゲートキーパーの仕事と注意点について書きました。傾聴の技術は投薬でも活用できます。相手のサインに気が付き、その分野のプロフェッショナルに橋渡しをするのがゲートキーパーの役割。自分で解決しようと抱え込まないようにしましょう。
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