孫子の兵法「兵は神速を聞く(貴ぶ)」を考える

温故知新

準備と速さ: 孫子兵法のバランス

タイトルの「兵は拙速を聞く」もしくは「兵は神速を貴ぶ」、どちらも中国古典ですが、前者は孫子の兵法、後者は魏志伝の出典。

どちらにしても、この言葉を聞いて、どのような意味を思い浮かべるでしょう?

①準備不足でも、とりあえず戦い始める。
②戦いが始まったら、素早く動く。

意味を調べてみると、①の説明してあることが多いです。以前もある方の講演会で、このセリフが①の意味で使われていました。

古典兵法書の解釈

孫子の兵法は、中国古典の中でも特に有名であり、その中で「兵は『拙速』を尊ぶ」という言葉は、戦略や戦術において重要な原則を示しています。しかし、この言葉の解釈は人によって異なり、様々な視点から探求されています。

古典兵法書の解釈は個人や時代によって異なり、孫子の兵法も例外ではありません。同じ文言でも、異なる背景や経験を持つ解釈者が異なる視点からそれを解釈し、自身の理解や経験に基づいて詮釈します。これにより、同じ言葉でも異なる解釈が生まれ、戦略や戦術において多様性が生まれることとなります。

準備不足でも?解釈に疑問

「兵は拙速を尊ぶ」という言葉には、「準備不足でもまず戦う」という解釈も一般的ですが、これには疑問が生じます。避けられない戦いを仕方なく戦うことは確かに兵法の一環であり、時には速やかに行動することが求められます。しかしただ単に「まず戦う」ことが必ずしも成功につながるわけではありません。拙速すぎる行動は、計画や戦略の不足を招き、逆に危険を招くこともあります。

他の項とのバランス

孫子は「兵は国の大事」と述べており、兵法を通じて国家の安全と発展を重要視しています。これは、戦略を短絡的に追求するのではなく、長期的な視点で兵法を展開し、国家全体の安全を確保することを意味します。兵法は一時の勝利だけでなく、持続可能な戦略の構築を重視しています。

孫子の兵法書では、孫子は準備を整えることの重要性も認識しています。充分な計画と準備が必要であり、また「敵を知り己を知らば」の言葉通り情報戦の重要性も説いています。孫子の兵法は、速さだけでなく、着実な準備と計画を通じて勝利を追求することを強調しています。

人・軍を育てる

また、拙速を貴ぶとはいえ、人を育てることにも時間がかかるという視点も重要です。兵法書の中に求められる将軍像、五項目も述べられています。準備不足で端的に生まれるものではなく、訓練と経験を積んで初めて成熟するのは時間がかかります。兵法を実践するためには、十分な教育と訓練、人材を育成する時間とコストが必要なのは基本中の基本。

始まったらすぐに終わらせる

「兵は神速を貴ぶ」という項。兵は拙速を尊ぶ、いまだ巧みの遅きを聞かざるなり。これは戦を起こすことではなく、始まったらすぐに終わらせる、という事が正解ではないでしょうか。

目的を達したらすぐに撤退することは現代でも重要視しています。目的を果たした後も戦い続けることは、資源の浪費や疲弊を招く可能性があります。成功の後は冷静に状況を見極め、適切なタイミングで撤退することが戦略的な判断となります。

孫子の兵法は、拙速な行動と着実な準備、国家全体の安全、人材の育成、成功後の冷静な判断といった要素をバランス良く取り入れることを提唱しています。そのため、単なる「まず戦う」だけでなく、広範な視点から兵法を理解し、戦略的な展開を図ることが求められます。

現代社会の問題点

さてここからは現代社会に当てはめてみたいと思います。

「先送り」ばかりの生活改善案

まずは国内問題から。少子高齢化は40年以上前から言われていました。有効な一手を出せないままズルズルと。会議ばかりはしているようです。

増税の話はあっと言う間に決まるのに、給付はかなり時間がかかります。

記憶に新しい方もいらっしゃると思いますが、世界的な感染症が蔓延した際も、他国に比べ国民に対しての給付がかなり遅くしょぼい。マスク2枚、それも一世帯に一つ。国境封鎖、ロックダウンもかなり遅い判断でした。敵を知らず、そして己も知らない。解除も他の国よりも遅く不便。

オリンピックや万博も、結局いくらになるのか。予算が後から膨大になっています。決定するのが遅いからですね~。

そして時間が経つとマスメディアも十分に伝えません。

海外の紛争・戦争

東欧も2度目の冬を迎えます。そして中東も長期化。時間がかかればかかる程犠牲者は増えます。また、世論も移り変わります。相当前から準備を進めていたと考えられますが、それでも長期化。

消耗戦はエネルギーなどのコストだけではなく、遺族を増やし、心理的重症を受ける事が多いです。

早く始め、早く終わらせる。目的を達したらすぐに撤退。

なによりも銃弾やミサイルが飛ばない世の中が理想なのは言うまでもありません。

まとめ

孫子兵法は「兵は拙速を尊ぶ」と説くが、解釈は多岐にわたり、戦略における多様性が浮かび上がる。一般的には「まず戦う」解釈もあるが、これが準備不足に陥り、成功に疑問が生じることも考えられます。

孫子は国家安全を至上視し、「兵は国の大事」と述べています。戦略を長期的に展望し、持続可能な戦略構築を強調。速さだけでなく、準備と計画を通じた着実な勝利を重視するはずです。

人・軍の育成には時間と労力がかかるとの視点も示さます。教育と人材の育成は時間とコストのかかる基本。

「兵は神速を貴ぶ」の解釈は、始まったら速やかに終わらせ、目的を達成したら即座に撤退することの戦略的重要性を解いていると考えられます。

これ等は現代を生きる私たちにも言える事ではないでしょうか。

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