AIで仕事を減らしたはずなのに、なぜか忙しい50代の話

オーストラリア生活

前回の記事で、私はメール対応や自己紹介文の修正、練習問題の作成などが、AIによって「数時間」から「10分〜20分」になったという話を書きました。

正直、これは誇張ではありません。実際に、一つ一つの作業時間は本当に短くなりました。

ただ、その後にひとつ気づいたことがあります。

「あれ、作業は速くなったはずなのに、なぜか一日を通しての忙しさがあまり変わっていない」

今回は、この「速くなったのに、忙しいまま」という感覚について、正直に書いてみようと思います。40代・50代でオンライン日本語教師をしている人、あるいはAIを使い始めたばかりの人に向けて書いています。

第1章 AIで速くなったはずの作業、その裏で増えたもの

AIにメールの下書きや練習問題を作ってもらうこと自体は、たしかに速いです。しかし、その前後には、AIを使う前にはなかった新しい作業が発生しています。

  • AIに何をどう頼むか、指示の仕方を考える時間
  • 出てきたものが正しいか、不自然でないかをチェックする時間
  • 気に入らなければ、頼み方を変えてもう一度作らせる時間
  • 教材として実際に使えるレベルかどうか、最終的に品質を確認する時間

一つひとつは小さな時間ですが、これが積み重なると、「作業自体は速くなったのに、AIとのやり取りにかかる時間」が新しく生まれていることに気づきました。以前は自分の頭の中だけで完結していた作業が、AIとの往復作業に変わった、という感覚に近いです。

第2章「空いた時間」は、なぜか別の仕事で埋まっていた

もう一つ気づいたのは、AIで浮いたはずの時間が、いつの間にか別の仕事で埋まっていたことです。

「教材作成が10分で終わるなら、もう1コマ授業を入れられるかもしれない」 「時間ができたから、この機会にプロフィールも見直しておこう」 「せっかく速くなったのだから、もう少し丁寧に作り込んでみよう」

こうして、浮いた時間に新しいタスクを詰め込んでしまう。効率化したはずなのに、気づけば以前と変わらない、あるいはそれ以上に忙しいスケジュールになっていました。これは私だけの傾向かもしれませんが、「時間ができると、その分だけ仕事を増やしてしまう」というのは、多くの人に心当たりがあるのではないかと思います。

第3章 AIに追われている自分に気づいた瞬間

そしてもう一つ、静かに増えていたのが、パソコンやスマートフォンの画面を見ている時間そのものでした。

メールの確認、AIとのやり取り、教材のチェック、生徒への連絡。どれも短時間の作業のはずなのに、気づけば一日のうちに何度も画面を開いています。

本来AIを使い始めた目的は、「授業以外の作業を減らして、疲労や拘束時間を減らすこと」でした。ところが実際には、作業そのものは速くなった一方で、画面に向き合っている時間や、AIの出力を気にかけている時間は、思ったほど減っていない。この矛盾に気づいたとき、「自分は今、AIに使われているのか、使っているのか」と、少し立ち止まって考えるようになりました。

第4章 AIには「速さ」を任せる、と割り切ってみた

ここで私が出した結論は、「AIに任せる範囲を、意識的に決める」ということでした。

具体的には、

  • 教材のたたき台作りや翻訳など、「速さ」が価値になる作業は積極的にAIに任せる
  • ただし、AIに頼んだ分だけ新しい仕事を追加しない。空いた時間はあえて何も入れない時間として残す
  • 「もっと良くできるはず」と際限なく修正を重ねるのをやめ、確認のタイミングをあらかじめ決めておく

というルールを、自分の中で持つようにしました。AIを使うこと自体が目的化してしまうと、結局振り回されてしまう。だからこそ、「どこを速くして、どこは速くしなくていいのか」を、自分で線引きする必要があると感じています。

第5章 生徒との時間だけは、速くしないと決めた理由

そのうえで、私が唯一「速くしたくない」と決めているのが、生徒と向き合っている時間です。

AIは、質問にすぐ答えることができます。しかし、生徒が言葉に詰まったとき、少し待ってみる。同じ文法の説明でも、生徒の反応を見ながら言い方を変えてみる。こうした「間」や「調整」は、速さを競うところではないと感じています。

これは、50代だから自然にできるという単純な話ではありません。若い教師の中にも、落ち着いて生徒に向き合える人はたくさんいます。ただ、少なくとも私自身は、これまでの社会人経験や人生経験を通じて、「急いで答えを出すこと」よりも「相手が納得するまで付き合うこと」に、自分なりの価値を見出せるようになったと感じています。

一方で、これはすべての場面で通用する考え方ではないとも思っています。たとえば、引っ越し直前で急いで日常会話を身につけたい学習者や、短期間で結果を出したいビジネス日本語の学習者にとっては、「待つ」ことよりも「速く進めること」のほうが求められる場合もあります。落ち着いて教えることが常に正解というわけではなく、相手や状況によって使い分けるべきものだと思います。

まとめ AI時代の忙しさとどう付き合うか

AIは、仕事を速くしてくれます。それ自体は間違いなく事実です。

ただ、速くなった分の時間は、放っておくと自然に別の仕事で埋まってしまいます。だからこそ、「どこを速くして、どこは速くしないか」を、自分の意思で決めておく必要があると感じています。

私の場合、教材作りやメール対応といった裏側の作業は、これからもAIに任せていくつもりです。ですが、生徒と向き合う時間だけは、意識して速くしないようにしています。

もしあなたが今、AIを使い始めたばかりで、「便利なはずなのに、なぜか忙しい」と感じているなら、それはあなたの使い方が悪いわけではないかもしれません。一度、「自分は何を速くしたくて、何は速くしたくないのか」を、整理してみることをおすすめします。

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